ステートメント1~8

保健・医療・看護・福祉・介護活動等を通じ、乳幼児から高齢者のすべてのライフステージの人、および未病からエンドオブライフ期にあるすべての健康状態にある人の尊厳と主体性を尊重します
 自宅や地域で暮らすすべての健康状態にある人々の尊厳と主体性を尊重し、その人の能力を最大限に発揮して、自立した生活を送ることができるように支援することをめざします。
 国連は1948年に世界人権宣言1) を採択し、すべての人が人権および自由を尊重し、それを確保するために達成すべき共通の基準を定めました。そのため、在宅ケアでは、未病からエンドオブライフ期にある多様な人々の健康増進・保健・予防・医療・看護・リハビリテーション・福祉・介護・就労・教育・住まい等、あらゆる側面において人としての尊厳と権利を重視し、すべての人の生活の質が確保されるように支援していかなければなりません。そのためには、在宅でも質の高いケアを受けることができるよう、諸制度の整備を推進します。
在宅ケアを必要とする人々の自己決定、自己能力の発揮、そして自らの幸福を追求する権利とその責任にもとづき、在宅ケアを必要とする人々が自立した質の高い生活を送ることを支援します
 在宅ケアの主体は、ケアを必要とする人々にあります。そのため、在宅ケアを必要とする人自身の自己決定を尊重する姿勢が重視されます。このことによりケアを必要とする人自身がもつ能力を発揮できるよう支援し、自らの幸福を追求する権利を守ると同時に、自身が選んだケア等への責任と役割も担いながら、自立した質の高い生活を送ることを支援します。
在宅ケアを必要とする人々へのケアの機会に格差が生じない在宅ケアのあり方を探求します
 乳幼児から高齢者まですべてのライフステージで在宅ケアを必要としているすべての人々が、どのような環境であろうとも、安全で安心できる質の高い在宅ケアが受けられる社会づくりが望まれます。
 日本在宅ケア学会は、地域・家族形態・性・生活水準・年齢・国籍・宗教・信条・障害・健康状態の違いによって、必要な在宅ケアの機会に格差がないようにし、資源の偏在のない適切な在宅ケア提供体制のあり方を探求します。さらに、各地域において、質と量の格差のない最善の在宅ケアを提供できる体制構築のために、学術活動を通じて広く推奨できる在宅ケアの内容を確立することに努力していきます。
在宅ケアを必要とする人々とその家族を中心とし、専門職、地域の人々、多機関をつないだ協働によるチームアプローチを推進します
 在宅ケアを必要とする人々の生活を支えるためには、多様なニーズに応えるケアが必要です。そのためには、在宅ケアを必要とする人々と家族を中心としたチームにより、ケアを提供することが求められます。チームには各専門職とともに、地域の人々を含み、生活の多面にわたるニーズに対応するケアを行います。チームはケアを必要とする人々と家族の視点を尊重し、医療機関や地域の各種施設と緊密に連携し、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、協働してケアを推進します。
市民とともに創る質の高い在宅ケアに向けた啓発活動に注力し、市民や医療機関、および地域の各種施設とともに地域包括ケアを推進し、共に支え合う地域共生社会づくりをめざします
 在宅ケアでは、すべての人々が住み慣れた地域でその人らしい生き方を実現することを推進します。そのためには、その地域の歴史や文化を踏まえつつ在宅ケアシステムを構築していくことが重要です。そのため市民とともに、行政・保健医療福祉機関・民間企業・ボランティア団体・NPO等が協力し合って、自宅や地域で最期まで自分らしく生きることの価値を共有して、共に支え合うための活動を推進します。とりわけ市民への在宅ケアに関する啓発活動に注力し、自律的な地域づくりを推し進めます。
 日本在宅ケア学会は人々の生活が地域の支え合いの中で成り立っているととらえ、すべてのライフステージを見据え、健康増進・保健・予防・医療・看護・リハビリテーション・福祉・介護・就労・教育・住まい等に関する必要なサービスを受けられるよう、諸サービスを包括的に提供し、地域共生社会による在宅ケアシステムを構築することを推進します。
質の高い在宅ケアの担い手としての専門職への生涯教育を推進します。また高度な実践力やケアシステムを変革する力をもつ在宅ケアの実践者の育成をめざします
 在宅ケアは複合的に多次元的に提供されます。そのため、在宅ケアの担い手である専門職は、常に自身のケアの質を高めるための研鑽し、高度な実践力やケアシステムを変革する力をもって実践する必要があります。日本在宅ケア学会は、在宅ケアの担い手としての科学性と精神性をバランスよく備えた人材を育成するため、生涯教育の機会を設けることを推進します。
不断の研究活動を通じた科学的根拠のある在宅ケアを推進し、実装に向けた努力と社会の変化に合わせた在宅ケアのイノベーションを行っていきます
 日本在宅ケア学会は、学術集会における研究成果の発表や機関誌「日本在宅ケア学会誌」の発刊を通じて、在宅ケアに関する研究成果を継続的に公表していきます。これらの掲載にあたっては、ピアレビュー制度をとりいれ、科学的根拠のある研究成果としての確認を行います。また、著者には、利益相反の申告を求めるとともに、研究遂行にあたって倫理的配慮について厳密な説明を求め、在宅ケアを必要とする人々の人権や個人情報保護を慎重に行っているかを確認し、著者に研究活動に対して高い科学性を求めていきます。加えて、学会としての組織的な研究活動を通じて、在宅ケアに関する重要な実践的課題を取り上げ、それらに関する科学的根拠を収集し、ケアの推奨をまとめたガイドラインづくりを推進します。作成したガイドラインは、定期的に根拠の更新を行い、現場で実装できるよう努力を行うなど、不断の研究活動を行っていきます。
在宅ケアを必要とする人々とその家族の生活の質の向上に寄与する在宅ケアの開発・構築を推進するため、政策提言とタイムリーな情報発信を積極的に行います
 日本在宅ケア学会は、在宅ケアを必要とする人々のニーズや在宅ケアを担う専門職等の実態、在宅ケア体制の改善・構築・開発に関するニーズ等在宅ケアの現状及び課題を学術的に検討し評価します。
 それらを踏まえて、人々が住み慣れた地域で主体性が尊重された在宅生活が継続できることをめざし、より良い在宅ケア体制の構築と、在宅ケアの質の向上のために、関連団体とも連携し、積極的に政策提言を行います。また、学会がもつ情報の発信をタイムリーに行います。
 
引用文献
1) United Nations. (1948). The Universal Declaration of Human Rights( 国連世界人権宣言). [Retrieved from URL. https://www.un.org/en/about-us/universal-declaration-of-human-rights, 2023年12月2日]. statement
 

2017年11月24日作成
2023年12月 2日改訂